「医療法人」とは何かご存知ですか?
「聞いたことはあっても、具体的に何を指しているのかよくわからない」という方も少なくないはずです。
本記事では、医療法人とは何か、医療法人の種類や類型、さらには医療法人化するメリット・デメリットについて解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、医療法人についての基礎知識を理解しましょう。
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医療法人とは?定義・目的・特徴を解説
医療法人の定義
医療法人を設立する目的
医療法人の特徴
医療法人の種類|社団医療法人と財団医療法人
社団医療法人
財団医療法人
医療法人の類型|持分の定めあり・なし
持分の定めなし
持分の定めあり|経過措置型医療法人
医療法人化することのメリット
社会的信用が得られる
事業展開がしやすい
税金面で優遇される
医療法人化することのデメリット
運営管理が煩雑になる
自由度が低下する
社会保険と厚生年金への加入義務が生じる
まとめ
医療法人とは?定義・目的・特徴を解説
ここでは、医療法人とは何か?について、以下の内容を解説します。
医療法人の定義
医療法人を設立する目的
医療法人の特徴
1つずつ解説します。
医療法人の定義
医療法人とは、簡単に言うと、医療施設を開設することが目的で設立される法人のことです。
例えば、病院や診療所、介護老人保健施設などの施設を設立する組織のこととされています。
医療法に定めがあり、設立する際には、定款または寄附行為を作成して、診療業務に必要な施設や資産を有して各都道府県知事から認可を得なければなりません。
医療法人を設立する目的
医療法人を設立する目的は、主に医療体制を確立することです。
文字通り「個人」である個人事業主よりも、医療法人は資金を集めやすい傾向にあります。
医療体制を確立するためには、資金を確保することが必須のため、個人ではなく医療法人とすることが多いのです。
医療法人の特徴
医療法人の特徴は、営利目的が薄いことです。
一般的な法人であればいかに利益を出し株主に還元するのかが大切ですが、医療法人では営利性を求めません。
一般的な法人では当たり前である余剰金の配当も、医療法人では禁止されています。
医療法人の種類|社団医療法人と財団医療法人
医療法人には大きく分けて、以下の2種類があります。
社団医療法人
財団医療法人
それぞれの医療法人の概要や特徴を解説します。
社団医療法人
1つ目は、社団医療法人です。
社団医療法人とは、医療施設の開設を目的として設立される法人を指します。
設立には、以下の2点が必要とされています。
金銭・不動産・医療機器などの出資または拠出
2ヶ月以上の運転資金
社団医療法人における社員は株式会社における株主、理事長は株式会社における取締役と似た役割を果たします。
そのため、理事長は社団医療法人の運営管理者として扱われます。
財団医療法人
2つ目は、財団医療法人です。
財団医療法人とは、寄附により集められた資金や財産によって運営される法人を指します。
寄附によって成り立っていること以外に関しては、社団医療法人と大きな違いはありません。
医療法人の類型|持分の定めあり・なし
社団医療法人医療法人の類型は、主に以下の4つです。
基金拠出型医療法人
社会医療法人
特定医療法人
経過措置型医療法人
このうち、上の3つが持分の定めがなく、下の1つは持分の定めがあります。
なお、持分とは1つの物の所有権を複数の人が持ち、その際にそれぞれが持つ所有権の割合のことです。
持分の定めなし
まずは、持分の定めがない3つの類型から見ていきましょう。
基金拠出型医療法人
社会医療法人
特定医療法人
1つずつ解説します。
基金拠出型医療法人
基金拠出型医療法人とは、2007年の医療法改正時に、出資持分の定めがない社団医療法人が基金制度を採用できるようになり、誕生した類型です。
「基金」とは、医療法人が拠出者(お金を出してくれた人)に対して返還義務がある財産のことを指します。
社員や理事以外からも拠出が可能であり、基金には、配当・利息がない点を理解しておきましょう。
社会医療法人
社会医療法人とは、都道府県知事から認定された医療法人です。
認定の基準は厳格で、救急・災害・周産期または小児救急など、公益性の高い医療を行うことが求められます。
その反面、税制上の優遇措置が認められています。
特定医療法人
特定医療法人とは、国税庁長官から承認された医療法人です。
医療の普及および向上と社会福祉へ貢献、かつ公的に運営されていることを要件になっており、認められると税制上の優遇措置が認められます。
こちらも承認の基準は厳格に定められています。
持分の定めあり|経過措置型医療法人
持分の定めがある類型は、経過措置型医療法人のみです。
2007年の医療法改正以降、出資持分の定めがある医療法人は設立できなくなりました。
しかし、医療法改正以前に存在していた出資持分の定めがある「出資限度額法人」は存続が認められています。
医療法改正以後は「出資限度額法人」から「経過措置型医療法人」へと改定されて現在に至ります。
そのため、新しく「経過措置型医療法人」を設立することはできません。
医療法人化することのメリット
医療法人化することのメリットは3つあります。
社会的信用が得られる
事業が展開しやすい
税金面で優遇される
1つずつ解説します。
社会的信用が得られる
1つ目は、社会的信用が得られることです。
医療法人を設立する際は、都道府県知事から認められる必要があります。
審査には厳格な基準が設けられているので、認可や承認を受けるとかなりの社会的信用が得られます。
社会的信用が高まると融資の審査が通りやすくなるなどのメリットを享受できます。
事業展開がしやすい
2つ目は、事業展開がしやすいことです。
医療法人になることで、分院の設立や介護施設・リハビリ施設なども展開できます。
多方面に事業を展開したい場合は、医療法人化するのがよいでしょう。
税金面で優遇される
3つ目は、税金面で優遇されることです。
個人事業主では累進課税制度が導入されているので、稼げば稼ぐほど税率が上がっていき、最高税率は45%になるのですが、医療法人では最高でも23.2%となっています。(※2022年7月現在)
また、社会医療法人や特定医療法人になれば、税金面で優遇されることになっているため、税負担がさらに軽くなります。
医療法人化することのデメリット
医療法人化することのデメリットは、以下の3つです。
運営管理が煩雑になる
自由度が低下する
社会保険と厚生年金への加入義務が生じる
1つずつ解説します。
運営管理が煩雑になる
1つ目は、運営管理が煩雑になることです。
医療法人になると、届出をしたり定款を変更するときに認認可が必要になったりするなど、運営上の事務的作業が増えます。
この点を考慮して、医療法人化しないケースが多いため、運営管理の煩雑さが大きなハードルとなっています。
自由度が低下する
2つ目は、自由度が低下することです。
医療法人は、地域医療の担い手として、継続的に事業を行う必要があるため、解散するには都道府県の許可が必要になります。
また、個人事業主であれば、余剰資金は自由に使えましたが、医療法人ではできません。
このように自由度が低下するのも医療法人化の1つのデメリットです。
社会保険と厚生年金への加入義務が生じる
3つ目は、社会保険と厚生年金への加入義務が生じることです。
医療法人では、従業員の数に関係なく、社会保険と厚生年金への加入義務が生じます。
特に規模の小さい医療法人では、社会保険と厚生年金が重い負担となることもあるので、注意が必要です。
まとめ
今回は、医療法人について解説しました。
営利性を重視するのではなく、地域医療の担い手として永続的に事業を行うことが求められます。
メリットも複数ありますが、同時にデメリットも複数あります。
メリット・デメリットをそれぞれ検討し、医療法人化するかどうかの判断をしてみてください。
これから病院・クリニックの開業を考えている方や、法人化することを検討している方は、「法人化することでどんなメリットを得られるのか」「どのタイミングで法人化をすべきか」と、一度は考えたことがあるのではないでしょうか。本記事では、医療法人の種類、法人化することでのメリット・デメリット、医療法人の手続きの流れ、法人化をするタイミングを詳しく解説します。将来、医師として独立を目指す方にも役立つかと思います。
目次
1 医療法人ってなに?
1-1 医療法人の特徴と種類
1-2 医療法人の目的
1-3 医療法人と個人病院・診療所との違い
2 医療法人のメリットは?
2-1 医療法人の金銭的メリット
2-2 医療法人の社会的メリット
2-3 医療法人の規模拡大のメリット
3 医療法人のデメリットは?
3-1 医療法人の金銭的デメリット
3-2 医療法人の社会的デメリット
3-3 医療法人の運営面のデメリット
4 医療法人化する手続きや手順
4-1 申請書作成
4-2 設立総会
4-3 申請
4-4 許可
4-5 登記
4-6 各種届出
5 医療法人化を検討するタイミング
5-1 年間所得が一定額を超えている時
5-2 社会保険診療報酬が一定額を超えている時
5-3 開業から7年目が経過している時
6 まとめ
医療法人ってなに?
医療法人ってなに?
医療法人には、4つの種類があります。ここでは、4つの医療法人の特徴、法人化することの目的、個人病院・診療所との違いについてお伝えします。
医療法人の特徴と種類
医療法人には、「社会医療法人(旧特別医療法人)」「特定医療法人」「基金拠出型法人」「経過措置型医療法人」という4つの種類があります。社会医療法人(旧特別医療法人)とは、都道府県の知事から認定された団体です。救急医療・災害医療・離島医療など、公益性の高い医療を行うことが必須条件となりますが、税制上の優遇措置が認められます。特定医療法人は、国税庁長官から公益性の承認を受けた団体を指し、法人税の軽減が適用されます。基金拠出型法人とは、基金制度を採用した団体です。基金とは、出資金のことで、外部から出資を募ることができます。運営や経営に関する発言権・議決権は出資者にはありません。経過措置型医療法人は、2007年4月1日以前に設立された、持分(財産権)のある団体を指します。
医療法人の目的
医療事業の経営を法人化することで、節税効果が期待できたり、融資を受けやすくなったりと、運営に必要な資金の調達が容易になることが期待できます。それにより、新しい医療技術を取り入れたり組織を改革したりと、事業を拡大することも可能になります。税制上の優遇措置は、このように医療の質が良くなることで、国民一人ひとりの健康寿命を延ばすことが狙いとされています。
医療法人と個人病院・診療所との違い
医療法人に属する場合は、収入を報酬という形で受け取るため、経営者であっても銀行口座から引き落としたり使用したりすることができません。ただ、医療法人にすることで、分院を増やせたり、病院以外に介護施設や看護師学校などの施設を運営できたりします。個人病院・診療所は、医師自身が医療サービスの提供を行う傍ら、経営を行います。収益は医療法人と違い、自由に扱うことができます。
医療法人のメリットは?
法人化をすることには、具体的にどのようなメリットがあるのかと気になる方も多いかと思います。税金対策ができ節税効果が期待できる、金融機関からの融資を受けやすくなる、クリニック以外に介護施設や看護師学校を運営できるなど、法人化にはさまざまなメリットがあります。下記でさらに詳しく説明します。
医療法人の金銭的メリット
法人化することによる金銭的なメリットは、節税効果が期待できるということです。例えば、理事長が家族を従業員などとして雇うことで、給与を支払うことができ、支払う給与金額が高いほど、病院や診療所にかかる税金を減らすことができます。所得税や住民税などの個人課税が、法人課税に変わることで税率が下がり、より税の負担を抑えられます。さらに、医療法人の場合は退職金の支払いが可能です。退職金は給与よりも税金の軽減ができ、節税することができます。
医療法人の社会的メリット
医療法人として運営を行うことは、社会的な信用度の向上につながると言えるでしょう。医療法人の設立には、都道府県知事の認可が必要となります。審議会を行うなど、厳選なる審査を経て決定されます。また、事業報告書や監査報告書の作成も義務付けられています。これらは、都庁や県庁に閲覧の申し出をすれば、一般の人でも見ることができます。運営において、社会的信頼が高いため、金融機関からの融資も受けやすくなります。
医療法人の規模拡大のメリット
医療法人の場合は、複数の医療機関を運営することができます。さらに、介護老人保健施設・看護師学校・医学研究所・精神障害者社会復帰施設などの業務も行えます。事業を拡大することで経営の幅が広がり、大きな収益が期待できます。また、新しい理事長への継承をスムーズに行うことができ、開設許可を新たに受ける必要はありません。
医療法人のデメリットは?
医療法人ってなに?
法人化には、メリットだけでなくデメリットもあります。例えば、事業拡大に伴って収益を上げられる反面、従業員の生活を守るため、健康保険や厚生年金に加入する必要があります。そのほか、後継者に財産贈与ができないこと、書類作成や手続き業務に時間がかかることなど、いくつかのデメリットがありますので詳しく説明します。運営時における注意事項についてもまとめています。
医療法人の金銭的デメリット
医療法人で得られた収入や財産は、経営者の判断で自由に扱うことはできません。また、雇った従業員や役員は、健康保険・厚生年金に加入させる義務があります。こうした制度への加入は、従業員の社会保障を守るためにも避けることができません。個人経営の病院よりも経費は増大しますが、健康保険・年金制度は、従業員の健康・暮らしを守るうえでも重要な措置となります。さらに、税理士への報酬も法人化することで増額されます。
医療法人の社会的デメリット
医療法人は公益性の高い医療を行っていることもあり、地域医療を行ううえでの責任があります。そのため、個人的な理由で解散することはできません。解散をする場合は、都道府県知事の認可が必要となり、理事長が退任する場合も新しい代表者に引継ぎを行わなくてはなりません。また、個人病院とは違い、財産を後継者に贈与することもできないようになっています。
医療法人の運営面のデメリット
法人化すると、事業拡大ができる反面、運営が複雑化・多様化します。具体的には、理事会・社員総会の開催、自治体の面談、保健所の実施検査などが発生します。特に大変なのが、書類作成です。事業報告書等一式を都道府県知事に毎年提出したり、2年ごとに役員変更の手続きを行ったりする必要があります。事業報告書等や監査報告書の閲覧請求が求められれば、適宜対応をしなくてはなりません。また、法人化をするためにも、さまざまな手続きが必要となります。この点から、法人化の決断をためらってしまう開業医の方は多くいらっしゃいます。
医療法人化する手続きや手順
法人化するための手続きは、おおまかに申請書作成・設立総会の開催・設立認可申請・都道府県知事の許可・設立認可書の登記となります。そのほか、開設するにあたり、各種手続きが必要です。ここでは、「申請書を作成するうえでのポイント」「都道府県知事の許可が下りるまでの流れ」を解説します。
申請書作成
医療法人の手続きをするのにまず必要となるのが、設立事前登録です。事前登録は、各自治体のホームページにある、入力フォームより申請を行います。登録内容は「現医療機関名」「設立代表者」「郵便番号・住所」「電話番号」「メールアドレス」です。自治体ごとに登録期間が決まっていますので、申請しないと仮受付書類の提出ができなくなります。そして、医療法人設立説明会に参加しなくてはなりません。自治体によって、会場に赴く必要がある場合もあれば、オンラインで受講できる場合もありますので、事前に調べておきましょう。最後に、医療法人の定款を作成します。定款で定めておかなくてはならないのが、「目的および業務」「名称および事務所の所在地」「開設する病院・診療所・施設の所在地」「社員および社員総会に関わる規定」「公告の方法」などです。厚生労働省のホームページに、定款例があるので、参考にすることをおすすめします。
設立総会
定款を作成してから、設立者3名以上で設立総会を開催する必要があります。また、総会で話し合った内容は議事録に残さなくてはなりません。具体的には、「開催日時、場所」「出席者の氏名、住所」「設立趣旨の承認」「設立時社員の確認」「役員および管理者の選任」「設立代表者の選任」「リース契約引継ぎの承認」「事業計画および収支予算の承認」「役員報酬総額の予定額」などです。自治体ごとに、議事録の参考例がホームページに掲載されていますので、確認するといいでしょう。
申請
設立認可申請には、仮申請と本申請があります。仮申請で指摘された箇所を修正し審査が通らなければ、本申請に進むことはできません。それぞれ、申請期間が決まっています。大幅な修正が必要になる場合は、自治体によって、次回以降の申請に回されることがあります。設立認可申請書の様式は、各自治体の指示に従ってください。
許可
設立認可申請書の本申請が完了したら、書類審査が行われます。自治体によっては、代表者の面談審査・実地審査などがありますので、事前に対策することが重要です。審査に通過すると、都道府県の医療審議会で審議されます。そうした流れを経て、都道府県知事の許可が下りると、設立認可書が交付されます。
登記
設立認可書を受け取ったら、2週間以内に登記を行う必要があります。登記する内容は「名称」「目的・業務」「事務所の所在場所」「理事長の氏名・住所」「存続期間、解散に関する規定」「資産総額」です。これらが終われば、医療法人を設立するのに必要な手続きは完了です。
各種届出
医療法人を開設するのに、都道府県知事の認可以外に、各種手続きを行う必要があります。例を挙げると、「診療所の開設許可申請」「法人診療所開設届」「個人診療所廃止届」「診療所使用許可申請」などの保健所の手続き、「法人の保険医療機関指定申請書」「個人の保険医療機関指定廃止届」などの厚生局の手続きが必要です。そのほかにも、銀行口座や電気・ガス・水道・電話などの契約の名義変更、税務署・中小企業事業団・医師会・リース会社などへの手続きも行わなくてはなりません。
医療法人化を検討するタイミング
個人で病院を経営するよりも、法人で経営したほうが節税を期待することができます。そのタイミングは、「年間所得が1800万円を超えている時」「社会保険診療報酬が5000万円を超えている時」「開業から7年目が経過している時」です。ここでは、タイミングのポイントについて解説します。タイミングがずれてしまうと、税金を多く支払うことにもなりかねません。
年間所得が一定額を超えている時
年間所得が、1800万円を超えている場合は法人化することを検討しましょう。理由は、個人事業主として、1800万円以上を稼いでしまうと累進課税となり、税率が40%に上がってしまうからです。法人化することで、15〜20%台に抑えることができ、大きな節税効果をもたらします。
社会保険診療報酬が一定額を超えている時
社会保険診療報酬が5000万円を超える場合は、個人で運営する医療機関を法人化させるタイミングです。5000万円を超えると、事業を運営するのに必要な経費「概算経費」が利用できなくなります。概算経費とは、経費計算に手間がかからないようにするための計算方法です。通常は、雑誌代やウォーターサーバーの利用費用などのレシートを集めて、計算しなくてはなりませんが、売り上げの〇%というふうに、概算経費にあてることで計算をしなくて済みます。こうした手間が増えてしまうと、運営がしづらくなります。
開業から7年目が経過している時
開業から7年が経過すると、課税対象額が上がります。特に注意しなければならないのが、開業時に購入した医療機器の償却期間が終わってしまうことです。6年目までは、減価償却分として経費を計上できていたものが、7年目になると経費として計上することができません。そうすると、医療機器が利益に換算されるため、利益の増加に伴い、支払う税金も多くなります。
まとめ
医療法人に関する概要をはじめ、法人化のメリット・デメリット、手続きの流れなどを紹介しましたが参考になったでしょうか。医療法人を検討している方も、個人病院・クリニックをこれから運営する方も、この記事を参考にさらに具体的に今後の構想を練っていただければ幸いです。「事業を拡大していきたい」「医療機関が累進課税対象となった」などであれば、法人化することも視野に入れましょう。
クリニックを開業して一定期間が経過し、医業収益が伸びてくると顧問会計事務所などから医療法人化の提案を受けると思います。
果たして医療法人にする方が良いのか?法人化するデメリットは?
ここでは医療法人を設立する事のメリットとデメリットを考察しますが、まずは医療法人の根拠条文や厚生労働省が出している医療法人運営に関する文章などを確認して、医療法人運営の現状と実態を理解してください。
●目次
医療法の確認
医療法人の運営
医療法人運営管理指導要綱
医療法人の非営利性
医療法人化のメリット
医療法人化のデメリット
まとめ
医療法の確認
そもそも医療法人とは、医療法を根拠規定とした法人格のことを言います。医療法第6章の条文を幾つか紹介しておきます。
<医療法第三十九条>
病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所、介護老人保健施設又は介護医療院を開設しようとする社団又は財団は、この法律の規定により、これを法人とすることができる。
2 前項の規定による法人は、医療法人と称する。
医療法人は常時勤務する医師が1名以上で病院・診療所・介護老人保健施設を開設する社団と財団(社団と財団の違いの詳細は後述します)を医療法人とすると規定しています。
昭和25年に制定された最初の医療法では、医療法人を設立するには3名以上の医師が必要でした。ですが、昭和60年の医療法改正で、常時勤務する医師が1名以上いれば開設出来るという内容に変更されました。この改正から、医師が1名で医療法人を設立する事が増えたために、無床診療所で医師は院長だけという経営形態でも医療法人が設立出来るようになったので、医療法人にしている無床診療所を俗称として「一人医師医療法人」と呼ばれる様になりました。
<医療法第四十四条>
医療法人は、その主たる事務所の所在地の都道府県知事(以下この章(第三項及び第六十六条の三を除く。)において単に「都道府県知事」という。)の認可を受けなければ、これを設立することができない。
2 医療法人を設立しようとする者は、定款又は寄附行為をもつて、少なくとも次に掲げる事項を定めなければならない。
(省略)
3 財団たる医療法人を設立しようとする者が、その名称、事務所の所在地又は理事の任免の方法を定めないで死亡したときは、都道府県知事は、利害関係人の請求により又は職権で、これを定めなければならない。
4 医療法人の設立当初の役員は、定款又は寄附行為をもつて定めなければならない。
5 第二項第十号に掲げる事項中に、残余財産の帰属すべき者に関する規定を設ける場合には、その者は、国若しくは地方公共団体又は医療法人その他の医療を提供する者であつて厚生労働省令で定めるもののうちから選定されるようにしなければならない。
6 この節に定めるもののほか、医療法人の設立認可の申請に関して必要な事項は、厚生労働省令で定める。
医療法44条では、医療法人の設立には都道府県知事の認可が必要とされています。
そのために都道府県庁へ認可申請手続きを行うのですが、この認可申請手続きは各都道府県によってかなりルールが異なります。「(都道府県名) 医療法人 設立認可申請」というキーワードで検索をすると、その都道府県庁のページが出てきますので、ご興味のある方はそちらをご確認下さい。各都道府県に共通して言えるのは、一般法人の様に簡単に設立が出来る訳でなく、年2回程度、決まった時期に設立認可申請を都道府県庁へ提出する流れで、設立が認可されて初めて登記が出来ます。
そして上記44条2項にある「定款又は寄付行為」を定めるとありますが、「定款」とは株式会社を含む社団である一般法人にて作成をする「運営上の基本規則」です。「寄附行為」というのは、財団法人を設立する際に作られる「運営上の基本規則」になります。ちなみに厚生労働省は医療法人における「定款」「寄附行為」の「モデル」を作成しており、この「モデル定款」「モデル寄附行為」に従って定款と寄附行為を制定する事になります。じつはこの「モデル定款」「モデル寄附行為」が非常に重要で、この文章を見ていると、厚生労働省が医療法人運営をどのように考えているのか?が良く分かります。
〇厚生労働省HP「社団医療法人定款例及び財団医療法人寄附行為例」
www.mhlw.go.jp
社団・財団医療法人定款・寄附行為例
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000135131.html
医療法人の運営
医療法人を理解する上で非常に重要な医療法人の運営について解説をします。
<社員総会>
社団医療法人における最高意思決定機関は「社員総会」で株式会社における「株主総会」に該当をします。
この社員総会を構成するのが「社員」と呼ばれる存在ですが、これは株式会社における「株主」とは少しニュアンスが異なります。株式会社における「株主」は、保有する株数の割合によって議決権と財産権が変わりますが、「社員」は財産権としての「出資持分の保有割合」は関係なく、社員総会における社員の議決権は「1社員1票」と定められています。したがって「出資持分を持たない社員」も存在しますし、出資持分をすべて持っている社員であったとしても、社員総会における議決権は1票にすぎず、すべてを決定出来る立場にはありません。
(社員・社員総会の関係図と社員・社員総会の主な権限)
※厚生労働省資料より抜粋
なお社員総会においては、事業報告書等の承認や定款変更、理事・監事の選任や解任に関する権限があり、法人の業務執行が適正でない場合には、理事・監事の解任権限を定説に行使して、適正な法人運営体制を確保する事が社員総会の責務であるとされています。なお財団医療法人における最高意思決定機関は「評議員会」と言い、その評議員会を構成するのが「評議員」となります。
<理事・理事会・理事長>
「理事」は医療法人の業務運営や意思決定に参画する役員として、理事会を構成します。なおこの理事会は、医療法人の業務執行を決定したり、理事の職務執行の監督や理事長を選出・解職する権限を持っています。この理事会において選出された法人の代表が「理事長」です。
(理事の関係図と主な義務)
※厚生労働省資料より抜粋
(理事会・理事長の関係図と理事会の主な権限)
なお2016年9月1日より施行されている改正医療法において、医療法人運営における「社員」「理事」「監事」の責任と権限が明記されており、より一層のガバナンス強化が法令化されている点は要注意です。
医療法人運営管理指導要綱
厚生労働省は、医療法人を設立する際の「定款」「寄附行為」について、モデルを提示している事は書きましたが、それとは別に医療法人を運営するにあたっての基本的なルールとして「医療法人運営指導管理要綱」というものをホームページ上で公表をしています。
〇厚生労働省ホームページ「医療法人運営管理指導要綱」
www.mhlw.go.jp
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000548754.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000548754.pdf
これが医療法人運営の基本となります。リンク先の内容をご確認しただければおわかり頂けますが、かなり詳細に医療法人の運営について定められています。医療法人の運営について、行政側が指導をする際の指針となる内容ですので、医療法人を検討される際には是非とも目を通しておかれる事をオススメします。
医療法人の非営利性
まずは医療法54条の規定をご確認下さい。
<医療法第五十四条>
医療法人は、剰余金の配当をしてはならない。
これは、医療法人が運営上で得た剰余金は関係者に配当をしてはならないという規定です。株式会社の場合は営利法人ですから、運営上で得た剰余金は「配当金」として株主に配当することは認められていますし、健全な組織運営のためには剰余金の配当は行うべきとされています。
この剰余金の配当という行為が、いわゆる「営利行為」であり、医療法人には「非営利性」が求められているという根拠がこの条文となります。ちなみにこの54条に違反をして配当をした場合には、医療法93条に罰則規定が適用されます。
<医療法第九十三条>
次の各号のいずれかに該当する場合においては、医療法人の理事、監事若しくは清算人又は地域医療連携推進法人の理事、監事若しくは清算人は、これを二十万円以下の過料に処する。ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。
七 第五十四条(第七十条の十四において準用する場合を含む。)の規定に違反して剰余金の配当をしたとき。
医療法54条の規定に違反をして配当をした場合には、20万円以下の過料が課せられます。この過料というのは金銭を徴収する制裁の一つです。 金銭罰ではありますが、罰金や科料と異なり、刑罰ではありません。 特に刑罰である科料と同じく「かりょう」と発音するので、混同しないよう過料を「あやまちりょう」、科料を「とがりょう」と呼んで区別することがある金銭罰の事をいいます。
医療法人は「非営利性の徹底」がテーマであり、この非営利性というのは利益を出してはいけないという事ではなく、挙げた利益の剰余金を構成員に分配をしてはいけないという事ですので、医療法人を検討する際には欠かす事が出来ない概念ですので、必ず押さえておいて下さい。
特に2007年4月1日より施行されている第五次改正医療法後は、厚生労働省はこの「非営利性の徹底」を求めており、以後の法令改正もこの概念に従って行われています。
医療法人化のメリット
ここまで踏まえた上で、まずは医療法人化のメリットから考察します。医療法人化のメリットは下図の通りです。
医療法人化のメリットとして強調されているのが「税の軽減」と「相続・医業承継の円滑化」です。個人事業としての所得税・住民税負担と法人税の負担では税率格差が大きいので、税負担を減らすという意味では医療法人化のメリットはあります。
あと「相続・医業承継の円滑化」は、2007年4月以降は出資持分がない医療法人しか設立できませんので、出資持分がない医療法人であれば社員と理事長の交代だけで医業承継が出来る点はメリットと言えます。
あとは附帯事業の展開や分院を出す事が出来る点も医療法人化のメリットと言えるでしょう。
医療法人化のデメリット
次に医療法人化する事のデメリットですが、下図をご覧ください。
医療法人化の最大のデメリットは、理事長個人の可処分所得が減少するという事です。
個人開業の場合には、医業収益から費用を引いた差額が所得となり、所得税と住民税の負担をした残り分は自由に使える個人財産となります。ですが、医療法人の場合は、医療収益から費用を引いた差額に対して法人税が課税され、残り分は医療法人の資金となるためにこれは自由に使う事が出来ません。医療法人化による可処分所得減少のイメージは下図をご覧ください。
この図の通り、医療法人の内部留保は自由に使えないお金として残り、理事長が引退する際の退職金として引き出すまでは、自由に使えません。
そのために医療法人化のメリットとされている税負担を軽減する事だけを目的にして医療法人化すると、ご子息の教育資金が捻出できないという事態になり、理事長報酬を引き上げると所得税・住民税の課税負担が増えるため、結局何のために医療法人化したのか分からなくなるというケースも多く見受けられます。
次に医療法人は、事業年度終了後に都道府県に対して事業報告書の提出が義務付けられており、この事業報告書は誰でも閲覧が出来ます。という事は、自分の医療機関の財務情報が公表されるという事ですから、見せたくない情報が開示されるというデメリットがあります。あとはこの事業報告書の提出や、総資産の登記変更など細々とした事務が発生するために、その都度、手間と費用が発生する点もデメリットと言えるでしょう。
まとめ
以上で見てきました様に、医療法人の運営についてはかなり詳細にルールが決められています。なお第七次改正医療法により医療法人運営はなお一層、厳格な運営をするように法令で決められてましたし、厚生労働省はそれを求めています。
あとは2019年7月8日に出された法人税基本通達の改訂により、生命保険を使った課税繰延効果が出せない状況となったのを考えますと、目先の税負担軽減を目的とした医療法人化が果たして本当に良いのか?と冷静な目で検討する必要があります。なお自由に使える資金を確保するためには「一定割合の納税が必要である」という事実があることを忘れないでください。
ただ分院を出す・附帯事業を行う・後継者が後を継ぐことが決まっている、などのケースにおいては、医療法人化は十分にメリットがあると思われますので前向きに検討すべきだと考えます。ですから極論を言えば分院を出す・附帯事業を行う・後継者が後を継ぐことが決まった時点で医療法人化を考えても十分遅くはないでしょう。
クリニックのホームページや医師の名刺に、「医療法人○○会」とあるのを見たことはありませんか?「信用力が高い」「節税になる」など、さまざまな印象が医療法人にあるでしょう。
では、どのクリニックも医療法人化するのが良いのでしょうか?
この記事では、以下の内容について説明します。
目次
医療法人とは
医療法人化のメリットとデメリット
医療法人化の流れ
医療法人化に必要な手続きと費用
多くのドクターが選択する個人としての開業。自分のクリニックを医療法人化するかどうか、そのタイミングはいつなのか、記事を通じて学びましょう。
医療法人とは
医療法人とは、「病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所、介護老人保健施設又は介護医療院を開設しようとする社団又は財団」です。
厚生労働省発表の、令和元年医療施設(動態)調査・病院報告の概況を見ると、「一般診療所」の施設数について、医療法人は43,593施設、個人は41,073施設。全体の約半数が医療法人です。
一般的に法人での事業実態がないまま診療所を開設することは難しいため、個人事業者として開業した約半数が法人化している計算です。
医療法人化のメリットとデメリット
医療法人化のメリットとデメリット
個人事業者として開業した医師が法人化する理由にはどのようなものがあるのでしょうか。また、法人化しない理由はどこにあるのでしょうか。医療法人化のメリット・デメリットを説明します。
医療法人化のメリット
法人化と聞いて一番に思うのは、「節税」でしょう。節税に関するおもなメリットは4つです。
法人税と所得税の税率差を活用できる
法人の場合の税率を見ていきましょう。所得が800万円までは15%、800万円を超えた部分に23.2%が課税されます。
一方、個人事業主として開業した場合の税率は、所得税の税率が基本です。所得税は5%から45%の7段階に区分されています。個人事業主として開業した場合、課税所得金額が695万円 から 899万9千円までの所得税は23%です。そして課税所得金額が900万円を超えると、33%になります。
よって、課税所得が高い場合には、法人化することで税率差による節税を考えることが可能です。ただし税金は、法人税や所得税だけではありません。課税所得に対して住民税も加算されることを知っておきましょう。
役員報酬の設定ができる
個人で開業する場合、家族を社員として雇い、業務を手伝ってもらうケースもあります。その場合、家族に支払うことのできる給与は青色事業専従者給与のみです。
一方、医療法人の場合は、院長の親族が理事に就任すると、理事としての役員給与の支給が可能です。さらに、院長を含めた役員は給与所得者になるため、役員報酬に対して給与控除を受けられます。そのため、所得を分散し、所得税額をおさえることが可能です。
退職金の設定ができる
法人の場合、個人事業では認められていない退職金の設定が可能です。退職金は退職所得控除を受けることができ、控除は給与所得よりも有利です。
経費に認められる範囲が広い
法人の場合、事業にかかる費用の他にも給与や退職金なども経費として計上できる点は魅力です。ただし交際費には、個人事業主にと違って上限が設けられています。
医療法人化その他のメリット
その他のメリットは以下のようなものがあります。
旅費日当の支給が可能で、日当は非課税
賃貸マンションの家賃を経費にできる
分院・介護事業所など法人内での事業の多角化が可能
法人を活用した相続対策ができる
事業継承が役員の変更などが比較的柔軟に対応できる
源泉徴収がなくなるため、資金を有効事業に活用できる など
医療法人化のデメリット
法人化をしていないクリニックがあることからもわかるように、法人化のデメリットも存在します。まず、お金の面からは3つです。
所得が少なくても法人税を支払う必要がある
法人税は所得が800万円までは15%、800万円を超えた部分に23.2%が課税され、住民税も追加されます。法人が支払うべき所得税・住民税の合計は、どれだけ所得が少なくとも、20%強は支払わなければなりません。さらに、たとえ事業が赤字であっても法人住民税の支払いが必要です。
交際費の上限が定められる
上記でも記載していますが、個人事業主の場合は交際費に上限はありませんが、法人の場合は年間600万円が損金に算入できる限度です。
法人の資産を得られない可能性も
2007年に医療法が改正され、今後新たに設立される医療法人は「持分なし医療法人」の分類になります。持分なし医療法人とは、出資者の法人への財産権がない、法人のことです。
「持分あり医療法人」の場合、出資率にしたがって法人の資産の財産権が発生します。一方、「持分なし医療法人」の場合、院長がどれだけ出資をし、法人を大きくしても、退職や相続の際に法人の財産権を主張することはできず、あくまで報酬は理事会で定められた範囲です。また、後継者不足などで法人を解散する際、法人の資産は国に没収されてしまいます。
医療法人化その他のデメリット
その他のデメリットは以下のようなものがあります。
厚生年金の加入義務がある
特別養護老人ホームが開設できない
自治体による立ち入りなどの指導が厳しくなる
個人で借りた開業資金は個人で完済する必要がある
地域医療の担い手として、事業の継続性が求められる
役員3名と監事(親族は不可)1名を探す必要がある
運営の厳格化が求められ、親族の理事であっても法人の運営に責任をとる必要がある
役員・社員も議決権があるため、理事会の判断によって法人の運営権を失う可能性がある
どのようなクリニックが法人化を検討すべきか
では、どのようなクリニックが法人化を検討すればよいのでしょうか。それは、メリットがデメリットを上回る場合です。
具体的には以下のケースです。
毎年の事業所得が多い場合(おおむね2,000万円以上)
法人化によって、クリニックの社会的信用を高めたい場合
家族を含めて、事業を継承する相手にめどがたっている場合
介護保険事業への進出や分院などを計画している場合
法人化は、自らの人生プランやマネープランにも照らし合わせて考える必要があります。将来的にクリニックをどのように展開し、そしてどのような出口戦略を描くのかを検討しましょう。
医療法人設立の流れと必要な手続きや費用について
医療法人設立の流れ
医療法人化を決断した場合は、どのような手順を追えばよいのでしょうか。
一般的には法人化を判断してから8~12ヶ月程度の時間が必要です。また、自治体によって方法が異なるので事前に確認が必要です。
東京都福祉保健局のホームページを参考に、法人設立の流れについて説明します。
ステップ1:自治体ごとの申請方法を確認
医療法人は個人事業のように、届出を提出するだけで法人としての事業を開始できるわけではありません。医療法人設置の許可を出す医療審議会はいつも開催されているわけでなく、自治体によって異なりますが年1~3回です。
医療法人設立の認可申請は、最初に仮申請をおこない、そこで認可が通った場合、文言の修正や書類追加などをおこない、本申請です。仮申請とはいいますが、事実上の本申請と考えて準備をしなければなりません。そして、医療審議会での諮問を受けて、晴れて法人設立の認可です。
医療法人の設立認可、届出等の手続きについては、2015年に厚生労働省から都道府県に権限が移譲されました。まずは自治体のホームページを確認し、審議会の日程や必要書類を準備しましょう。
ステップ2:書類の準備と仮申請
審議会の日程と書類を確認したら、まずは社員、理事、監事を決定。定款を作成し、設立総会を開催。そして、設立総会で決議した事項を議事録に記載します。
その後は書類の作成です。書類は定款にはじまり、30~40種類近くの準備が必要です。書類の内容は大きく分けて5つです。
総括的なもの
法人の財産・負債に関わるもの
人事に関わるもの
法人施設に関わるもの
事業計画に関わるもの
書類に不備があった場合は修正が入りますが、修正から本申請までの期間が短い場合もあるため、きちんと準備しましょう。
書類の準備が整ったら、設立認可申請書の提出(仮申請)です。保健所など関係機関の照会や自治体側との面接を含んだ、設立認可申請書の審査がおこなわれます。 仮申請後の審査には3ヶ月ほどの期間がかかり、本申請への許可が出たら、仮申請で提出した書類に捺印をして提出です。
ステップ3:医療審議会による審議と設立認可
設立認可申請書の本申請後におこなわれるのが、医療審議会による審議です。医療審議会による審議の後、設立認可書が交付され、医療法人の設立が認可されます。
法務局へ設立登記申請をおこない、自治体に登記事項の届出をすることで医療法人設立が完了。福祉保健局に法人としての開設届の提出をするとともに、個人事業としての廃止届を提出し、クリニックの法人への引き継ぎが完了です。
ステップ4:認可後の手続き
法人の設立が完了しても、そこで終わりではありません。医療法人を設立したあとは、銀行口座の開設、税務署への地方税の手続き、労働保険や社会保険の手続きなどが必要です。税理士さんや社労士さんと相談しながら、手続きを進めていきましょう。
医療法人の設立は、プロに頼むのもあり
法人化の流れに要する期間は、長いと1年ほどかかります。日常の診療をおこないながら書類を準備し、各種窓口との面談をこなしていくのは負担です。そのため、依頼料を支払ったうえで設立認可申請を行政書士等に依頼するケースも多くあります。
インターネットで検索すると、法人設立サービスを仲介する行政書士事務所が多数ヒットします。また、現在クリニックとしてお世話になっている税理士・銀行・医師会に紹介してもらうのもおすすめです。まずは各所に問い合わせてみましょう。
法人化を行政書士に依頼した場合、依頼料以外にも費用がかかるので注意が必要です。
行政書士への依頼料
登記簿謄本等の取得費用
診療所開設許可申請手数料
認可後の司法書士への登記手続き依頼手数料
おおむね100万円程度の費用がかかるのが一般的ですが、法人の経費で計上することが可能です。
医療法人化の判断は、クリニックの将来を見据えて検討を
本記事では、医療法人化について解説しました。
医療法人化のポイントは、法人化することがクリニックの未来、院長の未来に必要なことかどうかを考えて判断すべきだということです。
医療法人化は、「節税」というイメージが先行しますが費用と時間がかかります。メリット・デメリットの理解がないままの医療法人化は危険です。今後、クリニックの将来をどのように考え運営していくのか、ご本人・ご家族のライフプランと照らし合わせて検討しましょう。